定期演奏会ごとに制作いただく編曲作品は、私たちの活動の基盤となっています。
これまで制作いただいた編曲作品は“あゆみ①、あゆみ②、あゆみ③、あゆみ④”にまとめてあります。
管楽オーケストラの活動を支えてくださっている青山るりさんに「編曲について」伺ってみました。
Q:編曲の楽しみは何ですか?
A:
楽譜という平面の物が、演奏する人と聴く人に”音楽(音)”という形となって共有出来る事でしょうか。
私が書いた楽譜が音になるというのは、固体が気化するような感じが、私には少し近い気がします。
Q:編曲で苦労するのはどのようなところでしょうか?
A:
管楽器中心(吹奏楽の編成)の管楽オーケストラに編曲する際、元になる管弦楽曲で弦楽器に特有の奏法があると、管楽器でどのように表現するかに悩みます。作品の背景を調べたり、作品を分析して、作曲者の出したい音やイメージはできる限り反映したいと思っています。
Q:管楽オーケストラ版への編曲に向いている曲、そうでない曲はありますか?
A:
先ほども少し触れたように、弦楽器の幅広い音域や特有の奏法が作品の中心になっているような曲は、編曲が難しいと思います。華やかな感じの曲はわりと管楽オーケストラへの編曲に向いていると思いますが、意外に静かな作品でも編曲してみたら、「こういうのもいいね!」と感じる曲もあります。
Q:編曲をする上でのこだわりがあったら教えてください
A:
単純な楽器の移し替えではなく、もしこの作曲者が管楽オーケストラの編成で曲を書いたならば、こんな風にしたのでは?と想像して、それに近づけるように心掛けています。有名な曲ほど皆さんのイメージがありますが、そのイメージはそのままに、編曲によって新たな発見をしたいと考えています。
Q:いままでに編曲した曲の中で思い出深い曲を教えてください
A:
印象に残っているのは、シベリウス作曲の交響曲第3番です。交響曲の全楽章を編曲したのは初めてでしたが、編曲をしながら、この曲の魅力を感じていました。また、演奏してみると、さらに曲の良さがジワ~っと滲み出て、この曲がさらに好きになりました。
また、管弦楽の大編成の作品としてはプッチーニ作曲の歌劇「トゥーランドット」でしょうか。第1幕の抜粋の編曲を担当しましたが、プッチーニはスコアに舞台上の指示を沢山書き込んでいて、まるで演出家のようです。イタリア語の辞書と格闘しながらの編曲でした。
そのほか数多くの編曲に思い出がありますが、音楽の父バッハ作曲のパッサカリアとフーガの印象が強く残っています。この曲の編曲は本当に難しかったです。オルガン曲を管楽オーケストラ編成に楽器の種類や人数を広げていくのですが、楽器が次々と移り変わっていくなかでフレーズをつなげていくことの難しさを経験しました。しばらくはバッハの作品は編曲したくないと思うくらいの茨の道でしたが、演奏してもらうことで苦労が吹き飛びました。